Kll Bill Vol.1
(2003/米)
監督 クエンティン・タランティーノ
キャスト ユマ・サーマン
ダリル・ハンナ
ルーシー・リュー
サニー・千葉(千葉真一)
ジュリー・ドレフェス
栗山千秋 ほか

待ちに待ったクエンティン・タランティーノ監督の最新作。
思った通りのタランティーノワールド!こんなのアリ〜?って感じのエキサイティングな新感覚映画。元々大の日本映画好きで日本びいきのタランティーノ。そんな彼の、日本の文化と日本の映画にまつわるオタク的知識が満載。

ストーリーは、元プロの殺し屋である主人公ザ・ブライド(ユマ・サーマン)が、結婚式当日に仲間の殺し屋から襲われ、奇跡的に一命を取り留めた長い眠りから覚めた4年後、たった1人で自分を裏切った暗殺団に立ち向かう、という復讐劇。ザ・ブライドは、殺しのリストを作り、1人1人順番に探し当てて殺しに向かう。 リストのうちの1人は、日本のヤクザ界に女王として君臨するオーレン・イシイ(ルーシー・リュー)。彼女を殺すため、ザ・ブライドは日本にもやってくる。

ここからはもう、完全にタランティーノの空想の世界。だって、千葉真一演じる剣豪「ハットリハンゾウ」(この名前もおかしいって!)に特別に作ってもらった日本刀を、ザ・ブライドは平気で持ち歩いて飛行機の機内にも持ち込んでいるし、オーレン・イシイの乗った車を警護するバイク集団も、バイクに日本刀を差して走る。「んな訳ないじゃん!」とツッコミを入れたくなってしまう所満載なのだけど、突っ込んではいけない。だって、これはタランティーノが大好きなものばかりを集めた空想世界なのだから。

こんな風に書くと、外国映画にありがちな「外国人から見た日本のイメージ」で出来上がった、いわゆる日本人が見たらあまり気分の良くない映画のようだけど、決してそんな事はない。日本人が見ると思わず笑ってしまうような場面も多々あるけど、彼らは大真面目でやっているのだ。そして、そんなちょっとずれた感覚もかえって新鮮で、かつカッコよかったりもする。日本が舞台のエピソードには、お馴染みの日本人俳優も出演している。不自然な位にハイテンションで漫才みたいなやり取りも披露している千葉真一、バトルロワイヤルで狂気に満ちた高校生を演じた栗山千明は、バトルロワイヤルを見たタランティーノが彼女の為にキャラクターを追加した、というだけあって、ほとんどバトルロワイヤルでの役柄そのままで出演。ゴーゴー夕張というへんてこな名前で、ザ・ブライドと死闘を繰り広げる。他にも、テレビでおなじみのフランス人タレント、ジュリー・ドレフェスや北村一輝ほか俳優陣と、コスチュームデザイン、セットデザインなどの製作にも多くの日本人が関わっている。

タランティーノと言えばバイオレンス。
「パルプフィクション」でも「ジャッキーブラウン」でも、思わず目を覆いたくなるような痛いシーンが満載だったけど、このキルビルはテーマが復讐なので、休む暇なくずっとバイオレンス。ほとんど全編にわたってバイオレンス。手や首や頭が切り落とされて血しぶき噴出しまくりなのだけど、昔のヤクザ映画やちゃんばら時代劇もののようにわざとらしいくらいの血しぶきなので、かえってグロさは感じない。(血がダメな人には厳しいだろうけど…)それよりも見どころはやっぱりユマ・サーマンのアクション。千葉真一から殺陣の猛特訓を受けただけであって、刀を持つ姿もさまになる。主人公のザ・ブライドを彼女の為に書いたタランティーノは、撮影開始直前にユマの妊娠が発覚した時、ためらう事なく撮影を1年後に延期したと言うが、その位この役を彼女が演じる事が重要であると言うことは、映画を見れば納得できる。

時代設定もよくわからないし、ストーリーもはちゃめちゃ。途中のエピソードがアニメーションになったり、死闘のBGMがド演歌だったりして、和洋その他もろもろのごちゃ混ぜ映画なのだけど、混ざり具合が絶妙!フィルムが長過ぎて2部構成になったということで、今回はVol.1のみの上映なのだけど、昼メロのクライマックスみたいに観客の気持をめちゃめちゃ刺激するような終わり方で、思わず観客席のあちこちからため息がもれていた。第2部は来年公開予定。それまでこの満たされない気持をどこにぶつければいいのだ〜?普通の映画に飽きている人にはぜひぜひお薦めの映画。日本を愛する監督が作ったハリウッド映画で、今まで気付かなかった日本のカッコイイ所が見つかるかも…。


おすすめ度/★★★★★